“本のプロ”である書店員が、思わず納得・共感した「新書」7選
書店員がすすめる、思わず感動する新書!⑤
◆「女性の不機嫌の理由が分からない」と嘆く男性必読の一冊
『女の機嫌の直し方』黒川伊保子・著(集英社インターナショナル新書)
男にとって女の不機嫌ほど理不尽なものはない。人工知能(AI)の研究者が、脳科学やAIの知見から「男性脳」と「女性脳」の違いを解き明かす。女性の機嫌についてどうフォローするべきか? 『実用書』としても役に立つ一冊!?
☆推薦人:紀伊国屋書店新宿本店 梅田さん
「『女の機嫌の直し方』…なんて直球なタイトルなのでしょう。それがかえって気になり手に取ってしまいました。本書いわく、『女と男の考え方はそもそも合わないもの』。なぜなら、脳(思考回路)にも性差があり、『感情脳』たる女性は結論に至るまでの感情の流れも説明しつつ話をしたいのに、『倫理脳』たる男性はその話をぶった切って一足飛びに結論に至ろうとするとのこと。それで男女の間に衝突が生まれるらしいのですが、みなさんは身に覚えがありませんか? 私はあります! 『女性の不機嫌の理由が分からない…』とお嘆きの方には、ぜひ読んでいただきたいですね。男女の脳のメカニズムの違いがよく分かります」
◆「辺境」の国にしかできないことをやる…内田樹の最高傑作!
『日本辺境論』内田樹・著(新潮新書)
武道館論、映画論、教育など、幅広いテーマを取り上げ、多くの読者に支持される内田樹氏が、常に「世界の中心」を必要とする日本人を「辺境人」とし、日本人とは何者かという問いに答える。第三回新書大賞を受賞した話題作。
☆推薦人:ブックスタマ 加藤さん
「数多くの著書を持つ内田氏の本の中でも最高傑作だと思います。外国の文化にキャッチアップするのが得意で、自らが上位となって諸外国に発信することが苦手な日本人。それならむしろ「辺境」になりきってしまって、「辺境」の国にしかできないことをやろう、と独創的な提言を掲げます。日本の特性を『辺境』という言葉に見事に凝縮させ、特に自国を卑下するわけでもなく、むしろ、これからの日本の進むべき姿について自信を持って語っているところに心地よさを感じます」
◆ものごとを直線的に考えすぎると「見誤り」を生む原因になる
『新版 動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』福岡伸一・著(小学館新書)
2009年の発売当時から評判を呼び、ベストセラーになった『動的平衡』を、ES細胞やiPS細胞などの最新の知見を加えて新書化。「時間どろぼうの正体」「カニバリズムを忌避する理由」などなど、「生命とは何か」という命題に迫る。
☆推薦人:三省堂書店東京駅一番街店 岩本さん
「生命の仕組みが好きな人はもちろん、そうした生命理論から展開される福岡流哲学も読み応えあり! たとえば、タンパク質についての説明では『タンパク質60gを摂取して、そのあと10gのタンパク質を排泄したとしても、その10gはもともと体内で分解されていたタンパク質かもしれない。口にしたものが、そのまま出てくるというわけではない』というくだりが出てきます。日常的生活に置き換えてみても、ものごとを直線的に考えすぎると見誤りを生む原因になります。生物の仕組みひとつをとっても、多くを考えさせてくれる一冊です」